遺言書の重要性は理解しているが、遺言書を作成しても後で考えが変わるかもしれない、とりあえずは先送りするということは、お薦めできません。遺言書を作り直すことは可能です。いつ万が一の時が来るかわかりません。まずは、現段階でのお考えで遺言書を作成することをお薦めします。

相続発生後、法定相続人による遺産分割協議ではなく、ご自身のお考えで相続財産を相続させたい、遺贈したい場合、例えば内縁の夫、内縁の妻、連れ子、子の配偶者、法人、自治体等法定相続人以外に相続財産を遺贈したい、というときには、遺言書作成をお薦めします。法定相続人以外では、包括遺贈を受けた受遺者以外は遺産分割協議には参加できません。

 また、全ての相続財産について個々の相続財産を具体的に誰に何を相続する、遺贈するということが記載されていることが必要です。相続財産の相続する、遺贈する相続分の指定だけでは、具体的に誰がどの相続財産を相続するか遺贈されるか遺産分割協議が必要なためです。

 法定相続人以外への相続財産の遺贈をお考えの場合、事前に遺贈する相手の承諾を得ることをお薦めします。特に法人、自治体では遺贈を受ける側の規則等で受け取れる財産の種類が制限されている場合があるためです。

また、配偶者に配偶者居住権を遺贈したい場合、遺産分割協議で配偶者居住権を取得することも可能ですが、実現性を高めるために遺言書に入れることをお薦めします。

 法定相続人が未成年の場合、親権者が代理人として遺産分割協議に参加でません。法定相続人に未成年者がいる場合、遺産分割協議には、未成年者である法定相続人に対して特別代理人を家庭裁判所で選任してもらい、遺産分割協議をおこなうことになります。遺言書があれば、特別代理人の選任する手間や費用の発生を回避できます。法定相続人が認知症等で判断能力がない場合、成年後見人の選任が必要です。

 遺言書があれば、残された法定相続人が普段付き合いのない法定相続人、仲の悪い法定相続人との遺産分割協議を回避することが可能な場合があります。